この記事でわかること
- ティール組織の定義と、ラルーの5段階モデル(レッド〜ティール)の要点
- 「作り方に決まった手順は無い」と言われる理由と、それでも共通する土台=対話の質
- 日本企業がつまずく3つの壁(上下関係の文化/育つ前の丸投げ/形だけティール)
- 制度改革より先に1on1と会議の対話から変える、という現実解
- オレンジ→グリーン→ティールを対話の見える化で登る4ステップのロードマップ
- 中小企業でも目指せるのか(規模・業種の目安と、ひとつだけの条件)
ティール組織とは?30秒でわかる定義と5段階モデル
ティール組織とは、経営者や上司の指示命令に頼らず、メンバー一人ひとりが組織の目的に向かって自ら意思決定する「自律分散型組織」のモデルです。フレデリック・ラルーの著書『ティール組織』で提唱され、組織の発達段階が5つの色で整理されています。
- レッド(衝動型):力による支配で動く
- アンバー(順応型):階層と規律で動く
- オレンジ(達成型):数値目標と成果で動く。多くの日本企業はここ
- グリーン(多元型):多様性と合意を重視する
- ティール(進化型):自主経営・全体性・存在目的で動く自律分散型
似た概念に自主経営を特徴とする「ホラクラシー組織」もありますが、モデルの解説はここまでにして、本コラムは「では、日本の中小企業がティール組織をどう作るのか」という実践だけに絞ります。筆者は思考可視化フレームワーク「SANOWマップ」を通じて218社・1,508事例(2024年1月調べ)の組織対話を支援してきました。その中には、自律分散型(ティール)組織への風土転換を実現した事例も含まれています。この記事では、その経験から見えた現実的な手順をお伝えします。

なぜ「ティール組織の作り方にマニュアルは無い」と言われるのか
「ティール組織 作り方 ステップ」と検索すると、多くの記事が「決まった手順は存在しない」と結論づけています。提唱者のラルー自身が、ティール組織は手順書どおりに作るものではなく、組織それぞれの文脈から現れるものだと述べているためです。
これは事実です。しかし「だから作り方は語れない」で終わらせると、一歩も進めません。実際にティール的な組織へ移行したケースを観察すると、手順は違っても共通する土台があります。それが「対話の質」です。メンバーが自分で意思決定するには、少なくとも3つの条件が必要です。
- 情報と考えがオープンに見えていること
- 指示を待つのではなく、自分の頭で考える習慣があること
- 考えたことを安心して口に出せること
逆に言えば、この土台を作らないまま制度だけをティール風に変えると、高い確率で失敗します。次章で、日本企業がつまずく典型パターンを見てみましょう。
ティール組織づくりは、日本企業ではこの3つの壁でつまずきます

壁1:上下関係の文化 — 権限を渡しても「物が言えない」
役職や年次への遠慮が強い組織では、権限委譲の制度を作っても、実際の会議ではメンバーが上司の顔色を見て発言が止まります。「決めていい」と言われた側も、決めたことを後で覆される経験を数回すれば黙ります。制度より先に、発言が安全に扱われる対話の場を作る必要があります。
壁2:セルフマネジメントが育つ前の「丸投げ」
ティール組織の中核は自主経営(セルフマネジメント)ですが、指示で動くことに慣れたメンバーからいきなり指示を抜くと、自律ではなく放置になります。「自分で考えて」と言われて考えられるなら、とっくに考えています。自分で考えるための道具と、反復して練習できる場を渡さないままの権限委譲は、丸投げです。
壁3:役職廃止だけの「形だけティール」
役職を無くす、階層を減らす、肩書をやめる——形から入る変革は着手しやすい反面、対話の中身が変わらなければ「非公式な上下関係」が残るだけです。むしろ責任の所在が曖昧になり、以前より混乱したという声も聞きます。順番が逆なのです。
現実解:いきなりティールを目指さず、「1on1と会議の対話」から変える
3つの壁に共通するのは、制度を変える前に、対話を変える必要があるという点です。そこで現実解としてお勧めしているのが、日常の1on1と会議から着手する方法です。
SANOWマップは、1on1ミーティングを「変革の場」に変える思考可視化フレームワークです。上司はアドバイスをやめて「鏡」になり、まず相手の話を傾聴しながら、その言葉をオンラインホワイトボード上に文字や図としてリアルタイムに書き出します。部下は画面上の自分の言葉を眺めて、自分で気づき、自分で次の一歩を決める。この「気づき→自分で決めた行動」が毎回の1on1で反復されることで、上司の指示ではなく自分の意志で動く経験が積み上がります。これがセルフマネジメントの筋力になります。
実例もあります。ある老舗生地問屋では、SANOWマップによる対話の見える化を日常に埋め込むことで、自律分散型(ティール)組織への風土転換が実現しました。役職廃止から入ったのではなく、日常の対話から変えた結果として、組織の形が変わっていったのです。
移行ロードマップ:オレンジ→グリーン→ティールを「対話の見える化」で登る

いきなり頂上を目指さず、対話の見える化で一段ずつ登る。法人導入で使っている段階設計をロードマップにすると、次のようになります。
- Step1(一部で検証):一部の部門・チームで、見える化した1on1ミーティングを始める。効果を数字と実感で確認する
- Step2(会議へ拡張):会議で全員の発言をその場で書き出し、全員で眺めて決める。「誰が言ったか」から「何が書かれているか」へ議論の軸を移す
- Step3(意思決定の委譲):対話の質が上がったチームから、決められる範囲を広げる。丸投げではなく、考えが見えている状態での委譲
- Step4(文化として定着):マップは記録として組織に残るため、上司が交代しても対話の文化が引き継がれる。人に依存しない定着へ
オレンジ(達成型)からグリーン(多元型)を経てティールへ向かう道のりを、「対話の見える化」という一本の軸で登っていくイメージです。
うちの会社でもできる?規模・業種別の目安
「ティール組織は一部の先進的なIT企業の話では」と思われがちですが、SANOWマップが検証してきた218社の内訳は、コーチ・コンサルなどの対面サービスから製造・IT、不動産、医療・ヘルスケアまで幅広く、企業規模も年商1,000万円台の会社が半数以上を占めます。階層が浅く、トップの意思が届きやすい中小企業は、むしろ移行に有利です。
ひとつだけ条件があります。それは、トップ自身がまず対話の変化を体験する気があること。トップが体験せず現場に丸投げする組織では、どんな手法も形骸化しやすいからです。向き不向きの詳細はFAQ「法人導入について」で正直にお答えしています。
【Q&A】ティール組織の作り方についての解説
Q1. ティール組織とは何ですか?
A.経営者や上司の指示命令に頼らず、メンバー一人ひとりが組織の目的に向かって自ら意思決定する自律分散型の組織モデルです。フレデリック・ラルーが提唱した組織発達段階の最上位(進化型)にあたり、自主経営・全体性・存在目的の3つの特徴を持ちます。
Q2. ティール組織の作り方に決まったステップはありますか?
A.提唱者のラルー自身が「決まった手順は無い」と述べています。ただし、移行した組織には「対話の質が高い」という共通の土台があります。情報と考えがオープンに見え、メンバーが自分の頭で考え、安心して発言できる状態を先に作ることが、実質的な第一歩になります。
Q3. ティール組織づくりが失敗する典型的な理由は何ですか?
A.対話の質を変えないまま、制度だけを変えることです。上下関係の文化が残ったまま権限だけを渡す、セルフマネジメントが育つ前に丸投げする、役職廃止など形だけを真似する——の3つが典型的な失敗パターンです。
Q4. 中小企業でもティール組織を目指せますか?
A.目指せます。むしろ階層が浅く、トップの意思が届きやすい中小企業のほうが移行しやすい面があります。SANOWマップで検証した218社・1,508事例には年商1,000万円台の企業も多く含まれ、老舗生地問屋が自律分散型(ティール)組織へ風土転換した事例もあります。
Q5. SANOWマップはティール組織づくりにどう役立ちますか?
A.1on1ミーティングや会議で、メンバーの発言を傾聴しながら文字や図としてリアルタイムに見える化します。自分の考えを眺めて自分で気づき、自分で次の一歩を決める経験が毎回の対話で反復されるため、指示待ちが減り、自律分散型(ティール)組織の土台となる「自分で考えて動く文化」が育ちます。
組織づくり・1on1ミーティングに関するコラム
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