1on1といえば、SANOWマップ

Story

2年かけた変革が、役員異動ひとつで消えた

SANOWマップの話をする前に、先に消えた話をさせてください。
これは、うまくいった話から始まる物語じゃありません。
消えた話から始まる物語です。

菅仁(すがじん)— SANOWマップ開発者
SANOWマップ開発者・菅 仁

Act 1

第一幕 消えた変革

「まあ仕方ないよね」の顔

Tier1の自動車部品メーカーで、業務変革をやっていました。
現場に定着するまで、2年。
それが、役員の異動ひとつで、一気に元に戻った。

契約終了後のフォローアップで、顧客の会議室に行ったときのこと。
当時の担当者さんは「まあ仕方ないよね」っていう、サラリーマンの顔をしていました。
怒ってもいない。悲しんでもいない。仕方ないよね、の顔。

組織を変革しようとしても、地に根づかないと全く意味がない。
あの会議室で、それを見ました。

火が消えていく表情

別の大手自動車メーカーでは、本当にやる気に溢れた方がいました。
僕らと共に設計開発の進め方を変えると決意して、何年も現場の変革を主導した人です。
でもトップが変わり、この手法への投資に懐疑的になった。
周りがついてこなくなり、その人はだんだん、すり減っていった。

その表情の変化を、覚えています。
指揮命令系統の力。村社会の力。その大きさを、しみじみと感じました。

アドバイスが、人を止める

もうひとつ、忘れられない発見があります。
自社のウェブサイト刷新プロジェクトで、後輩の成長を願って、具体的なフィードバックをたくさんしました。
かつて僕が上司や先輩からもらったアドバイスを、良かれと思って渡したんです。

相手は見る見るうちに、こういう目になりました。
「だったらそのまま自分でやってよ」
「私はいる必要あるの?」

良かれと思ったアドバイスが、人を止める。
教えるほど、相手は考えるのをやめる。
そもそもそういうコミュニケーションができる信頼関係を醸成してすらいない。
これは僕の失敗談です。そして、SANOWマップの出発点のひとつです。

悪いのは誰か。誰でもない

研修会社の講師も、コンサルティングファームのコンサルタントも、一生懸命やっています。
そこに問題はない。問題は、構造です。

研修は非日常の空間でやる。だから日常の空間である現場に適用できない。
フォローアップのミーティングも、所詮は非日常。
すべての主体が受講生に依存する構造は、変わらない。

足りなかったのは、組織が変わるモチベーションだけじゃない。
自分の人生が良くなっていくという、手触り感のある体感。
組織と個人が、同時に変革する手法。
それを作らなければと思って、セミリタイアして、自分の中で熟成させました。

Act 2

第二幕 マップは、二度生まれた

天狗の20代、ポンコツコンサル

時計を少し戻します。
このマップの前身「左脳マップ」の一番のきっかけは、リーマンショックのタイミングで、コンサルティング会社に転職したことでした。

当時20代の僕は、本当に天狗でした。
「何でも答えを自分が導き出せる」と信じていた。
そんな調子ですから、クライアントへのヒアリングがうまくいくはずもありません。
本来なら、ただ「教えてください」という姿勢でいいはずなのに、「自分が答えを出さなきゃ」と必死になって、相手の話が全然頭に入ってこない。

リーマンショックの最中です。
そんなポンコツコンサルが、すぐに職を追われることは明白でした。

理解したことを、そのまま見せた

キャリアの生き死にがかかって、必死に考えました。
そして、自分が理解したことを、そのままお客さんに見せるようにしたんです。

すると、見せるだけで、お客さんが勝手に語り出した。
「ここはこうです、ああです」と詳細に教えてくれる。
「ここはちょっと解釈が違っててね」と、こちらから聞いてもいないことまで話してくれる。
気がつけば、この積み重ねで会議も仕切れるようになり、ポンコツだった僕は、トップファシリテータ、トップコンサルになっていきました。

その人の考えは、その人の前提に立てば、全て正しい。
だから、僕が答えを出す必要なんて、最初からなかった。
見えないものを見える化して、鏡のように見せる。それで人は、勝手に語り出す。

マップの原型は、うつの底より先に、生き残りをかけた現場で生まれていたんです。

コンサルティング現場で描かれていたマップの原型(縮小表示)
当時、現場で実際に描いていたマップの原型。ツリーで広げ、表で締める——この反復が、のちの5つの区画になった。

うつの底で、今度は自分に向けた

30歳前後で、うつ病を経験しました。
そのどん底で、それまで対人で使っていたマップを、初めて自分に向けたんです。
自分の気持ちを、ただただひたすらマップに書き落としていきました。

「そうかそうか、自分はそんなことを感じているのか」
「そもそもなんでこういうふうに思うんだろう」
「自分のせいだって思うのは、どこから来ているんだろう」
「いつ頃からそんな感覚を持っていたんだろう。幼少期のあれか」

そうやって書いていると、上空から自分を俯瞰しているような感覚になって、タイムスリップもしていて、まるで幽体離脱をしているような感覚でいました。

対人の現場でこの素養が整っていたからこそ、どん底でも自分を俯瞰できたんだと思います。

1回書いただけで、劇的に変わったわけじゃありません。
でも「そうか、自分はそういう人間なんだな」という自己理解が、少しずつ高まっていった。
偏った自分の中身が、だんだんバランスよくなっていく感覚がありました。
今でもバランスが良いかと言われるとわからない。
けれど、自分という人間を理解できている手触り感は、あります。

十数年かけて、ちょっとずつ

正直に言うと、どん底の夜に完成形が降ってきた——という話ではないんです。
マップの原型は、ちょっとずつちょっとずつ出来上がったもの。
完成形に至るまで、そこから十数年かかっています。

一夜の天啓じゃなくて、1ミリずつの積み重ね。
SANOWマップ自体が、そうやって生まれました。

この「思考と感情のマネジメント」を探求した十数年の一部は、著書『量子力学シンキング』(徳間書店)にもまとめています。

「これは左脳だけじゃないですね」

このマップ、最初は「左脳マップ」と呼んでいました。
東大の理系卒で、エンジニアとコンサルタントをやってきた人間が作った、ロジック重視のツール。見た目もロジックツリー。だから「左脳」。

でも、もともと考えていたのは
「行動が変わるには思考が変わる必要があり、それだけでは足りず、感情も変わらなければならない」
ということでした。
行動・思考・感情の一貫性こそが、本物のロジカルシンキング。
理想をイメージする、怖がっている自分をイメージする——右脳の力も、実は使っていた。
自分の中では、もともと「全脳」のマップだったんです。

あるとき、クライアントさんに言われました。
「これは左脳だけじゃないですね」

全脳マップでは語呂が悪い。でも「サノーマップ」なら響きがいい。
英語の頭文字を当てはめてみたら、そこにいろんな意味を込められる。
そのワクワク感で、SANOWマップに改名しました。

SANOWには、2つの意味があります。

Subject(問い)/ As-is(現状)/ Need(理想)/ Obstacle(障壁)/ Will(次の一歩) — マップの5ステップ

Speak(話す)/ Analyze(分析する)/ Notice(気づく)/ Observe(観察する)/ Work(動く) — マップを見ながら気づき、発見し、動きたくなる

表現は違うけれど、本質的な意味は共通しています。
名前ですら、クライアントさんとの対話から生まれた。それがこのマップらしいなと思っています。

これが、そのSANOWマップです。

実際のSANOWマップセッション画面(一部・縮小表示)
実際のセッションで描かれた1枚。5つの区画に、クライアントの思考と感情がそのまま残る。

14歳の自分に、このマップを渡すなら

もうひとつだけ、個人的な話をさせてください。

僕はフィリピン育ちの帰国子女です。
14歳で日本に帰ってきて、「空気を読め」の洗礼を浴びました。
自分の見ている景色が、まるで映画館のスクリーンみたいになる——後から知りましたが、離人症のような状態です。

それでも、崩れずに生き抜いた。
乗り越えて生きてこられた自分を、本当に誇りに感じています。

その14歳の自分にSANOWマップを渡すなら、かける言葉はこれだと思います。

「今どんな気持ちなのかを、素直に書いていいんだよ。その気持ちを、周りの人に素直に表現していいんだよ」

それで現実が変わったかはわかりません。
ただ、あの頃の気持ちがあったからこそ、この手法が出来上がった。
だから当時の自分を「解決したい」という気持ちは、そこまでないんです。

Act 3

第三幕 願い

SANOWマップは、ただの手法に過ぎない

開発者がこれを言うのも変ですが、本音です。
SANOWマップは、ただの手法に過ぎないんです。

本質は、「自分って一体何者なんだっけ?」「自分はこの状況から何を感じているんだっけ?」——
感じていること、考えていること、これからどう動くのか。
そこを一気通貫させること。

それを大事にして自分なりにマップ化していったら、対面にも使える代物に発展した。そして、社内のトップコンサルタントになってしまった。それが正直なところです。

どんなセッションとも、バッティングしない

SANOWマップは、どんなセッションともバッティングしない手法として開発しました。
コーチングでも、コンサルティングでも、日々の1on1でも。いま使っている手法を、何ひとつ手放す必要はありません。

やることは、ただひとつ。見える化する。
聴き手は、真剣に聴けるようになる。
話し手は、自分の言葉を見て、気づけるようになる。

その繰り返しで、お互いの人生も、それぞれが重なり合う事業も、驚くほどうまくいく。
それを願って開発したのが、SANOWマップです。

「これが対話なんだよ」を、教育の現場にも

もうひとつ、個人的な動機があります。
僕のワイフは教員で、研究授業で「対話」の研究をすることになりました。

でも、「対話」の本質は、教育委員会にも、学校現場の先生にも、親御さんにも、まだ十分に伝わっていない——そんな状況が現実にあります。

「これが対話なんだよ」ということをお示ししたくて開発したものでもあるんです。
めちゃくちゃ具体的な手法になったと思っているので、教育のような領域にも展開できたら嬉しい。本気でそう思っています。

一番の理想は、本当に心の対話ができること。
安心して、心理的安全性を全開にして、お互いの強みも苦手も分かち合って、どう乗り越えるかを助け合う。
そういう社会につながる、あなたの人生の変革につながる、ただの小さな一歩になったら、本当に幸せです。

218社・1,508事例。数字は積み上がりました。
でも僕が見たいのは数字じゃなくて、その先の景色です。

一億総天才社会

僕が見たい景色は、みんなが「それぞれに個性があっていいよね」という顔をしている社会です。

人種のサラダボウルと呼ばれるニューヨークのように、特性も能力も得意技も違っていて、助け合うのが当たり前。
その本質は「それぞれが違うということを、分かり合えていること」。
これを日本に持ち込めたら、それだけで相当、様子は変わります。

一人ひとりの天才性が、当たり前に発揮されている。
僕はそれを「一億総天才社会」と呼んでいます。

「安定して変わらない」から「安定して1ミリずつ進化し続ける」へ

日本を否定したいわけじゃありません。
子どもの頃、海外から見た日本は「憧れの国」でした。
良い意味の村社会は残したい。悪い意味の村社会はなくしたい。
良い意味の安定は残したい。悪い意味の安定はなくしたい。

「安定して変わらない」という文化が、「安定して1ミリずつ進化し続ける」という文化に変わるだけで、日本は爆発的に変化する。日本の「失われた数十年」が一気に瓦解する。
一気に世界のリーダーに上り詰める。僕は本気でそう思っています。

あの会議室の「まあ仕方ないよね」の顔が、「1ミリ進んだね」の顔に変わる。
SANOWマップは、そのための、ただの手法です。
誰かの用意した正解ではなく、あなたの中にある「あなただけの正解」にたどり着くための道具です。

想像を超える未来は、誰かの答えではなく、自分自身の言葉と向き合うことから始まります。

Founder

開発者について

菅仁(すがじん)— SANOWマップ開発者・超思考研究家

菅 仁

SUGA JIN

SANOWマップ開発者/超思考研究家

東大工学部卒・元経営コンサルタント・連続起業家・著者。「頭は良い。でも人がついてこない」と言われ続けた30歳、うつ病を経験。そのとき必要だったのは、正しいアドバイスではなく、自分の思考と感情をいったん外に出して眺めることだった——。うつ病を自力で克服する過程で思考と感情のマネジメントを体系化し、製造業ITの開発プロセスに根差してSANOWマップを設計。アドバイスをやめて、鏡になる。その一点を、218社・1,508事例で磨き続けている。

著書『量子力学シンキング』(徳間書店)

2年かけた変革が、役員異動ひとつで消えた。
うつの底で、今度はそのマップを、自分に向けた。

「アドバイスをやめて、鏡になる」は、ここから生まれています。

詳細プロフィール →noteLinkedInX

Media — 著書・メディア掲載

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物語はここまで。ここから先は、あなたの番です。

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アドバイスをやめて、鏡になる。その具体を、手を動かして掴む。

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