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AIに相談すると、なぜ「おっしゃるとおりです」と言われるのか

文字数:約4,167字 / 読了目安:約9

夜のオフィスでひとりデスクに向かう男性

この記事でわかること

  • AIに反論すると「おっしゃるとおりです」と折れる——迎合が起きる構造
  • 相手に合わせてくれることと、信頼できることは別だという話
  • 人間だけが持つ「違和感を放置しない力」と、それが相手の思考を動かす仕組み
  • 言葉になっていない「間」——詰まっているのか、何も浮かんでいないのかの違い
  • 質問すること自体が価値になる、という逆転
  • AIと人の線引きは、まだ動いている最中だということ

「おっしゃるとおりです」に、覚えがありませんか

AIに相談していて、こんな流れになったことはないでしょうか。

提案をもらう。少し違う気がして「でも、これはこうだよね」と返す。すると——「おっしゃるとおりです。私の理解が不足していました」。丁寧に折れてくれる。こちらの意見を受け入れて、修正案まで出してくれる。

親切です。腹も立ちません。それでも、なぜか釈然としない。この人(AI)の言うことを、どこまで信じていいのだろう。そんな感覚が残ります。

こちらでは、この既視感の正体をひもときます。AIを否定する記事ではありません。私たちはSANOWマップのAI版も開発し、特許も取得しています。そのうえで、対話を仕事にしている実践者たちが「これは人にしかできない」と語った内容を、そのまま構造として整理しました。

迎合と信頼は、別のものです

実践者のひとりは、こう言いました。有料版・無料版といろいろなAIを日常的に使ったうえでの実感です。

AIには、人におもねるところがすごくある。「でも、これはこうだよね」と反論すると、「おっしゃるとおりですね」「そこは勘違いしていました」と返ってくる。そこに信頼を寄せられるのかというと、信頼とはちょっと違う気がする。

ここには、見過ごされやすい区別があります。合わせてくれることと、信頼できることは、別のものだということです。

人間の相手なら、こうはいきません。「いや、それは違うと思う」と食い下がってくることがある。あるいは、こちらの言い分を受け止めたうえで「その感覚と自分の感覚は違うけれど、そのギャップは何だろう」と考え込む。簡単には折れないからこそ、折れなかったときの言葉に重みが出るのです。

ノートパソコンに向かってAIと対話する人物

違和感を放置しない、という仕事

では、人は対話の中で具体的に何をしているのか。実践者たちの言葉を整理すると、最初に出てくるのがこれです。

違和感を放置しない。

話を聞いていて「あれ、そこのニュアンスは少し違うのでは」と引っかかる瞬間がある。そこを流さずに「こういう認識で合っていますか」と確認しに行く。

この確認には、思わぬ効果があります。聞かれた側は、説明しようとしてもう一度考えるからです。説明するために言語化し、言語化する過程で、自分の頭の中がもう一度整理される。

つまり、質問は情報を取りに行く行為ではありません。質問すること自体が、相手の中に整理を起こす行為なのです。ここが「答えを返す」ことと決定的に違います。

実践者のひとりは、こう言い切りました。「質問してくること自体が、AIにはできないことなのではないか」と。

言葉になっていないものを、読んでいる

もうひとつ挙がったのが、言葉の外側にある情報です。

声のトーン。表情。その場の雰囲気。言葉尻では「はい、やります」と言っていても、そこに引っかかりがあることは伝わってきます。受け取る側の感度に個人差はあるものの、訓練すれば一定レベルまでは誰でも気づけるようになる、という話も出ました。

そして、実践者のひとりが挙げたのが「」でした。

相談者が考えて詰まっているのか、それとも本当に頭の中に何もなくて答えが出てこないのか。そういうところは、言葉だけでは分からない。

同じ沈黙でも、意味が正反対です。考えが動いている沈黙は待つべきで、何も浮かんでいない沈黙は助けるべき。この判断を間違えると、対話は止まります。そして判断の材料は、テキストのどこにも書かれていません。

窓の外を見ながら考え込む男性

さらに、感情のやりとりもあります。一緒に喜ぶ。悲しみに寄り添う。聴き手のエネルギーが伝わることで、話し手のポジティブな気持ちが増幅し、そこから次のアイデアが出てくる。「そうですね」と文字で返ってくるのとは、別のことが起きています。

問題は、AIではなく「聞き方」かもしれない

ここで、少し角度の違う指摘が出ました。コーチングを教えている実践者からです。

受講者の多くは、アドバイスを前提にして質問をしてしまうのだそうです。「今どういう状況ですか」と聞くとき、やたらと状況を深掘りする。何人のチームなのか、いつまでの案件なのか——。

「そこまで詳しく聞いて、何の意味があるのですか」と問い返すと、こう答えるそうです。「一緒に考えてアドバイスしようとしていました」。

つまり、答えを出す前提で聞くと、質問は情報収集になる。この構図でいる限り、人が対話をしてもAIと同じことをしていることになります。むしろAIのほうが速くて正確でしょう。

人にしかできない問いがあるとすれば、それは情報を取りに行く問いではありません。相手の中に何かを起こしに行く問いです。

向かい合って近い距離で話す二人

線引きは、まだ動いています

正直に書きます。この話には、まだ結論がありません。

表情を読むAIも、声色を読むAIも、そのうち出てきます。「人にしかできない」と今日言えることが、来年も同じとは限りません。AIに渡す部分と、人でなければできない部分の線引きは、これから見極めていく段階です。

そのうえで、いま私たちが価値だと信じているのは、「終わった結果をまとめること」ではありません。その瞬間の触発です。

クライアントが自分の言葉で話す。それが目の前に書き出される。人に聞かれながら、自分の言葉を見る。「あ、これはこうじゃなかった」と自分で発見する。この瞬間に起きていることが、対話の側に残る仕事だと考えています。

SANOWマップは、その瞬間のためにあります

SANOWマップは、聴き手が鏡となり、相手の言葉をその場で画面に書き出していく対話の型です。問い・現状・理想・ネクストアクション・ボトルネックという流れに沿って、思考の表面ではなく、その奥の感情から整理していきます。

この型が扱っているのは、まさにこの記事で挙げてきたものです。違和感を確認しに行く問い。感情から整理する順番。書き出された自分の言葉を、本人が見る構図。218社・1,508事例の対話の現場で検証してきました。

AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「いま、この瞬間に隣で聴く」という仕事の輪郭が、かえってはっきりしてきたと感じています。

ただ、ここまで読んで分かるのは2割です。残りの8割——聴かれながら自分の言葉が見えていく感覚は、体験しないと伝わりません。

セッション体験について見る

まとめ — 合わせてくれる相手と、動かしてくれる相手

AIが「おっしゃるとおりです」と折れてくれるのは、優秀さの表れでもあります。速く、正確で、いつでも付き合ってくれる。使わない手はありません。

ただ、こちらに合わせてくれる相手は、こちらを動かしてはくれません。違和感を確認され、説明しようとして言語化し、その過程で自分の考えが整理される——この面倒なプロセスは、簡単には折れない相手がいて初めて起きます。

答えが欲しいときはAIに。まだ言葉になっていないものを扱いたいときは、人との対話に。線引きが動き続けているとしても、この使い分けは当面変わらないはずです。

【Q&A】AIと人の対話の違いについての解説

Q1. AIが反論するとすぐ折れるのは、なぜ問題なのですか?

A.折れること自体が悪いわけではありません。問題は、こちらの意見に合わせてもらった結果が、こちらの考えを何も変えないことです。対話の価値は、自分ひとりでは行き着けなかったところへ連れて行かれることにあります。合わせてくれる相手からは、その体験は得られません。

Q2. 人が対話でしていることを、ひとつ挙げるとしたら何ですか?

A.違和感を放置しないことです。「そのニュアンスは少し違うのでは」と確認しに行く。すると相手は説明するためにもう一度考え、言語化する過程で自分の頭が整理されます。質問は情報を取りに行く行為ではなく、相手の中に整理を起こす行為です。

Q3. 「間」を読むとは、具体的に何をしているのですか?

A.沈黙の意味を見分けています。考えが動いていて詰まっているのか、それとも何も浮かんでいないのか。前者は待つべきで、後者は助けるべきです。同じ沈黙でも対応が正反対になりますが、その判断材料は言葉のどこにも書かれていません。表情や声のトーンから読み取っています。

Q4. AIが表情や声色を読めるようになったら、人の役割はなくなりますか?

A.その線引きは、まだ動いている最中だと考えています。表情を読むAIも声色を読むAIも、いずれ出てくるはずです。今の時点で断定はできません。ただ、私たちが価値だと考えているのは「終わった結果をまとめること」ではなく、自分の言葉を見た瞬間に本人が発見するその瞬間の触発です。そこがどう変わっていくかを、見極めている段階です。

Q5. SANOWマップはAIを否定しているのですか?

A.いいえ。SANOWマップのAI版も開発しており、特許も取得しています。AIと人を対立させる必要はなく、役割が違うだけだと考えています。詳しくはChatGPTに相談してもモヤモヤが消えない理由もあわせてご覧ください。

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合わせてくれる相手より、動かしてくれる対話を。

読んでわかるのは2割。残り8割は体感です。

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